2025年4月
感覚的な読書を考えた月。物語を追わない。分析しない。セリフが誰の言葉か考えない。あと結構極端な本しか読んでないかも。。
・波 ヴァージニアウルフ

六人の登場人物のセリフからなる劇=詩小説。読後、頭になにも残らなかった。タイトル通り潮のように言葉が満ち引き、重なる。物語になる未満の断片や独白や瞬間的な情景描写が互い違いに話される。波のように何度か繰り返されるパッセージが混沌の中に静かにリズムを作る。この系統で不思議だけど退屈しなかった。
・クールクール LSD交感テスト トムウルフ
フィーリングの本!LSDやマリファナ吸いながらバスで旅をして捕まるまでの話。圧倒的な哲学、文学、サブカルの知識量から出てくる神秘主義的な思考と文体。LSD交感テストをして、人と人、私と世界が分け隔てなくつながっていることを確かめる。ビートルズ、ボブディラン、グレイトフルデッドの音楽をバックにケンキージー、アレンギンズバーグなどビートニク、ヒッピーの偉人たちが出そろう。ドラッグについての体験記てみんなこのいかれている文体だ
・ホワイトノイズ ドンデリーロ

頭が陰謀論や都市伝説に侵されている人しかいない小説。主人公はヒトラー研究者の第一人者でありながら、週3レッスン通って一次文献(ドイツ語)が読めないし。子供たちはすぐ「エビデンスは?」と口答えしてくる。世間の話題は空中毒物事件。人類は脳にプラスチックごみが溜まって寿命はたぶん減少していく。漠然とした死の恐怖が生活の中に漂う。主人公は哲学や信仰と陰謀論を混合しながら救済の道を模索する。
・不安の書 ぺソア

居酒屋にひとりで散文、日記を書きつけている男です。言うことがないから、書くことに耽る。何を望むのか、何を望まないのかもはや分からず、宇宙の空虚のもとに横たわっている。自分が感じているのか、考えているのか、存在しているのかも分からない。。
・ジャネットウィンターソンの本
今、過去の時制や現実、空想の輪郭がほとんど曖昧で理解できないまま文字だけ先に追ってしまう魅力がある。物語として何があったのか全然追えていない。でも身を任せていると空飛ぶ魔法の絨毯みたいに知らない心地よい場所に連れて行ってくれる。マジックリアリズムというみたいです。恋する躰とか、あ、恋人と別れたんだ~くらいの理解度です。すみません。。
・村田沙也加の本
いろいろ読んだ。地球星人が一番面白かった。彼女の本は家族や恋や性のあり方を揺さぶる小説を書く。男の妊娠。恋をして家族を持つのが当たり前の社会から逃げる人々。その中でも性潔癖が一番印象的だった。性欲は家の外で処理すべきもの。父と母でさえ近親相姦。 プライベートな領域は自分の聖域でありたいっていう感覚。
ここは結構考えたんだけど既存の価値観に捕らわれない脱構築的な性行為ってなると、どうやっても究極はバタイユみたいな新しいアブノーマルなことを探求するか、村田沙耶香的なクリーンでセックスしない在り方のどっちかになるよねっていう。
たぶん他者の価値観でなく自分を見つめてって主張が主眼かな。インタビューとか軽く読んでても。基本的には自分に忠実でいいんだけど、既存価値観を無視することを徹底するとこうなるというか。同様で脱構築的な要素に、言葉の分類を嫌っているところはある。LGBTQとか言葉をどう細分化してもこぼれ落ちたり見えにくくなる人達がいて、そこのありのままの在り方を描こうとしているようにも見える。
・ウエルベックの本

まじで人を偏見とステレオタイプで見て、えろい事しか考えてないオジサンばっかりなんだけど、ちゃんと鬱になって癌になって身近な人が死んでいく。詩も読むし社会学哲学を引用してくる。この感覚はほかの作家にない。90~00年代だからそんな古くない。国別風俗のレビューとか覗き小屋の楽しさをずっと書いてたり、やっぱ変なんだけど。なんか主人公モテるんだよね。これ作者の願望だよね。いっちょ前に博学見せつけてくるけど。
・here時を超えて。
映画です。一つの場所、同じが画角で、一コマずつあらゆる時代を代わりばんこに見せる実験海外コミックが原作。これはフォレストガンプのスタッフが作っているらしいですが、本当に理想的な映画化でした。登場人物やインテリアひとつひとつがかわいらしく、断片的に出てくるひとたちの人生や成長を覗き見れる豊かな気持ちになる小品でした。原作もコミックでしかできないユーモアがあって別の魅力があるのでぜひぜひ。
2025年3月
3月。小説読む習慣が戻ってきた。
・ミュージックディスクガイド 2010-2024 vol1

レコード屋さんに通って仕入れていた情報が全て明け透けになっていて正直困惑。オールジャンルの生きた良質な選盤がこんな安価でアクセスできるかと。音楽に関わって生きるモノはマストバイな一冊。vol2も早く発売しろってやつです。
・恋愛をめぐる24の省察

恋に落ちて別れるまでの機微を言語化する小説。恋に落ちる過程では、心の内をさぐり合うゲームをして、2人だけ理解できるやり取りを重ねる。別れる過程では、互いに溶けていく間になんとなく融和できないところを見つけて、なんとなくタイムリミットがきてしまう。好きなのに試したり攻撃してしまう心理とか、相手から好意を向けられるとゲンナリしてしまう心理とか説明していて、恋愛のバイブルとしても小説としても面白かったです。
・ミロの展示
ミロの絵画の展示行ってました。上はポストカード。彼はシュルレアリスムの系譜の画家で記号のような不思議な生き物を描きます。現実の生き物か空想の動物か、何かに似ているようで似ていない、はたまた、絵画と記号の間、意味と無意味の間、古代の壁画と近未来のイメージの間を行き来して宙ぶらりんになった気持ちです。キュート。
・アノーラ
今年アカデミー賞作品賞をとった映画。こんなf*ck連発してて受賞した作品これまでにあったか…。登場人物がみんな可愛らしくてほのぼのするんですけど、やってる事は車盗んだり店破壊したりしてるんですよね。それも全部物語に必要な要素で笑える上質な映画になってて。ロマンスもギャグもあってフィルム・ノワールみたいな終わり方をする凄い映画です。これ最高です。
・ほか読んだ小説

ここから下は万人にお勧めというわけではなく。
西瓜糖の日々/リチャード・ブローティガン
西瓜糖でできた世界に住む住人の物語。彼は詩と小説の間のような文を書く作家で、あっちの世界とこっちの世界を行ったり来たりする、(特に翻訳で)村上春樹にも影響を与えたようです。
猫のゆりかご/ヴォネガット
原爆の科学者について取材していた作家が話の流れでボコノン教に入信して長になるとかいうヘンテコ小説です。そして世界は終焉を迎える…
宇宙人に連れ去られたら4次元的な世界の見方を習得した人の話です。過去と未来の視点を行ったり来たり。でも自然機械論的な世界観で未来を変えることはできないようです。仕掛けは面白い、物語としてはまずまず。
第三の警官/フラン・オブライエン
老人を殺害した主人公が金庫を盗もうとしたときから、すべての価値基準が自転車をベースにするパラレルワールドに迷い込む話です。全員自転車の話しかしないし、自転車に関心がない主人公が変わり者という世界線。
スウィムトゥバーズにて/フラン・オブライエン
主人公が小説を書き、その小説の主人公がまたその作者の世界を題材にした小説を書くというかなり入り乱れたメタ小説です。読書カロリーは高め。
精神病院の閉鎖空間と対抗するビートニクなおじさんの話です。これは映画のが名作です。
父死/バーセルミ
読めるけど寓話的にいかれてて意味不明な小説。右目を洗ってリップルの神になる、脚は近くの電柱でこしらえるし、ペニスは身体に巻き付けてある。 ポルノ映画の話とか口と髪を絡め合うティーンエイジャーとかでてくるし、やりたい放題。
ヴィトケンシュタインの愛人/マークソン
世界で一人生き残った女性が美術館を旅しながら独り言をずっと呟いている小説です。覚えている哲学や文学の記憶を思い出すか、目の前の状況しか考えることがない。有象無象に不確かな記憶と知識をいったり来たりしてます
モロイ、マウロンは死ぬ/ベケット
死ぬ間際の男がベットの上で考え事をしている小説です。耳に音は聞こえるけど何かは識別できない。見えるけどかろうじて白い光だけ。ここにくるまで何していたっけ。意識の流れをとらえた作品です。
文体練習/クノー
99通りの文体で同じ話を書いています。自由詩。あべこべ。モダンスタイル。予言。オノマトペ。とか。正直面白くはないけど、、、哲学から言語や口語を研究対象にする構造主義が出てくる時代と同期しているのかな、と感心したり。
2025年2月
2月に読んだ本とか観た映画とか
・ブッダマシーン

MATで買った輝る念仏機。邪念がでてきたときに聴いてます。
・HIROMIX 01

Hiromixが10代の頃の日記,イラスト,写真をまとめたブック。少女が恋愛をして哲学して今の瞬間を駆けている。「今は21世紀。世界は変わりつつある。この世界を抱きしめて、あなたのすごい力、溢れる愛を頼む!」。壮大で生きているっていうエネルギーを感じる。
・SF大百科辞典


SF小説、映画などを年代毎にまとめた百科事典。1995年刊行でマトリックスやノーランの映画が載っていないのが惜しい。作家紹介に多くの頁を割いているが、むしろ各年代冒頭の年表の解説が当時の科学や社会情勢などを抑えていて読み応えがある。WW2後60年代のUFOなどのSFブーム、80年代のサイバーパンクの間の70年代のSF映画ブーム(スターウォーズ,エイリアン,未知との遭遇etc)では案外SF小説の名作か少ないことに気づいたりして面白い。
・哲学の歴史

政治,経済,社会学,心理学,文学,神学等かなり広義の哲学を扱っている。哲学者の経歴や時代背景がかなり詳細。初学者が通読するのは挫折する、700p×13冊、1ヶ月で頑張って2/3読了。世界はひとつの生き物だとか、感覚で捉えられるこの世界は全て不確かだとか、詩的で浪漫に満ちた世界観を哲学者ごとに見せてくれる。最近読んだ中だと下のニーチェとか好き
・ブルータリスト
ナチスドイツからアメリカに亡命したユダヤ系建築家の半生を描いたフィクション映画。アカデミー賞最多ノミネートだけあって音響や画が素晴らしかった。フィルムの汚れや色の偏り、手ブレが良い塩梅で入ってくるのがA24らしい。この映画の個性でもあるけど登場人物が皆せっかちで合理的に動きすぎる感じがした。問題が浮上した時には結論がでている。その代わりに、アメリカの移民問題やイスラエル帰還の重いテーマ、かつ3時間半の長尺に反して、物語がスンナリ進む軽さがあった。
・情報の世紀(去年改訂版でてた)


世界のあらゆる発明,芸術,出来事などを羅列した年表。全ページ上の画像の通りで解説は無い。どうやって読むんだよって感じだけど、たとえばピカソがキュビスム提唱した年にロシアではレーニンが唯物論刊行、ラフマニノフの交奏曲第2番の初演があったり、分かるところがあったら繋がって楽しい。ただわかるとこが少なく修行の足りなさを感じる。精進。
2025年1月
なんとなく読んだ本とか観た映画とか予備録
・art since 1900


半月くらいかけて読んだ。1900年代以降のアートの解説本。厚くて文字いっぱいだった。精神分析、哲学、建築、社会情勢などなど多角的に1900年から何かあった年のアート解説してる。オタクにはおすすめ。
・図鑑デザイン全史


20世紀(アートアンドクラフツから)以降の家具の変遷を追った本。とにかく図版が多くて楽しい。時代の流行、ムーブメントとかも最低限抑えて資料的にもいいし、家具好きがただ眺めるだけでも。手元に置きたくなる本。
・美術の物語
西洋美術の歴史の本。一読するだけで満足して手放しちゃった。初学者が古代エジプト〜現代まで流れを追うにはたぶん1番ハードル低い本。ただルネサンス以降は著者が好きな絵を愛でるだけの内容になってて(ちゃんとポイントは抑えているけど)かなり読み飛ばした記憶。
・コンテンポラリーゴシック

ゴスファッションからb級映画までサブカルに流れるゴシックの流れを把握するため読んだ本。中世の魔女狩り、異端裁判、ゴシック調の聖堂や城、退廃した貴族文化、夢、幻想とかが混ざりあったカルチャー。
・象徴主義と世紀末世界

19世紀の印象派と同時代の印象派以外の美術、文学を扱った本。びっくりするぐらいオカルトと結びついている。アートで言うと20世紀のシュルレアリスム、表現主義の原型になっているところ。軽くアートの知識とフランス革命後のフランス史、文学の知識(ゾラとかフローベールの名前が分かれば大丈夫)が必要で、ちょっとハードル高め。ロマンを追って実現しない錬金術とかを真剣に研究している姿とか少し愛おしい。
・TTP



ひとつの場所を同じ画角で撮り続けた写真集。ひとつの空間、違う時間でそれぞれ物語がある。公園に人それぞれが持つ記憶とか変わらずあり続ける場所がもつ時間の厚みとかを感じで胸がいっぱいになる本です…